小売業界は、業態変化や構造変化などによる影響が最も早く、そして最も大きく出る業界として知られています。直近2年間を振り返ると、ついその数年前まで「成長産業」の代名詞的な存在で高く評価されてきたコンビニエンスストアも大きな変革期を迎えました。
コンビニの看板だった24時間営業の見直し等を強いられ、また、過多気味の出店ペースに伴う競争激化により、各社の収益性は大きく低下しているのが実情です。たとえば、業界第4位のミニストップを見ると、もうすぐ終わる2020年2月期も3期連続の最終赤字が懸念されています。
業界4位という中堅とはいえ、コンビニが3期連続の最終赤字に陥るとは、少し前まで想像できない事態だったことは確かです。また、大手3社の業績も頭打ち傾向が顕著であり、コンビニを巡る変革はこれからが本番と言えましょう。
2020年に試練を迎えるのは百貨店か?
こうした流れから、今年(2020年)も引き続き、コンビニが小売業界で大きな注目を集めると思われます。しかしながら、コンビニ以上の試練を迎える可能性が高いのは、意外にも百貨店(デパート)ではないでしょうか。
「意外にも」としたのは、百貨店は地方を中心に不採算店舗の閉店や撤退が続いている上、大手は経営統合などの実施により、業界全体では既にスリム化が終わっている印象が強いと思われるからです。
しかし、地方店舗の閉店や地場資本の倒産はまだ続く可能性が高く、東京五輪終了後には比較的安泰と見られている大都市圏でも店舗閉店や業態転換などが実施されても何ら不思議ではないと考えられます。
特に注意すべきは、地方の地場資本の百貨店です。
閉店セールも行えず唐突に店舗を閉めた「大沼」
1月27日、山形県の地場百貨店「大沼」が破産を申請し、創業320年の歴史を閉じました。大沼の創業は江戸時代の1700年(元禄13年)。全国で3番目に古い歴史を誇っていました。
しかし、折からの消費低迷や人口減少等により経営悪化が続きました。2年前の2017年12月には創業家が投資ファンドへ経営を譲渡して再建を図りましたが、その投資ファンドの資金問題が発生。
その後、経営権を取り戻した上で、山形市一体となった“買い支え”運動を展開しましたが、市民からの反応は芳しくなく、今回の経営破綻に至ったようです。
今回の大沼の経営破綻では、注目すべき点が2つあります。
1つ目は、店舗閉鎖が唐突に訪れたことです。理由は資金繰りの悪化です。普通、百貨店の店舗が閉鎖する時は、「感謝売り切り」や「閉店御礼売り出し」など何らかの名目や形で閉店セールを行います。
これは、「長年ご愛顧いただいたお客様に対する感謝」というだけでなく、在庫商品の整理を行って取引先や下請け業者等への支払い原資を確保するという意味でも、非常に重要なイベントなのです。その必要不可欠なイベントを告知する間もなく、突然の閉鎖を強いられたわけですから、いかに資金繰りが厳しかったかがうかがえます。
各種報道によると、取引先への27日の支払が困難になったとのことですが、金融機関から“つなぎ融資”を拒否されたことは想像に難くありません。これは、大手百貨店では考え難い事態と言えましょう。
ただ、地場資本の地方百貨店が、同じように閉店セールさえ行えずに、ある日突然に破綻することは決して珍しくないのです。
最近では、2017年2月27日に、仙台市の「さくら野百貨店 仙台店」が突然の閉鎖(破産手続き開始)となりました。厳しい経営が続いていたこと、閉店セールを告知することもできなかったこと、従業員に突然の解雇通告がなされたこと等、今回の大沼と非常に似通っています。
この背景として、取引金融機関による融資審査の厳格化が挙げられますが、逆に言うと、地場資本の脆弱さを如実に表しています。
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