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鬼気迫る演技を見せる羽生も、氷を降りると細かな気配りを忘れない。担当になって初現場となった18年11月のGPシリーズ・ロシア杯では、隅っこから手を伸ばして机にボイスレコーダーを置こうとした私に気づき「大丈夫ですか。受け取ります!」と言い、自ら機器を並べてくれた。
五輪2連覇の国民栄誉賞スケーターにして、この気配り。「これが噂の羽生結弦か…」。私は頭の中でつぶやいていた。
担当として正式にあいさつできたのが、19年世界選手権の一夜明け取材後だった。「ちょっとよろしいでしょうか…」と名刺を渡そうとすると、背筋を伸ばして対応。スケート靴を持っていたため「片手で申し訳ありません」と名刺を受け取り「羽生結弦です。よろしくお願いします!」と笑顔。誰にでも愛される理由が分かった気がした。
競技の世界から去るが、ちょっと期待していることがある。今年2月18日の北京五輪での最後のサブリンク練習。全力の9曲を披露し、去り際に取材エリアで残した言葉が忘れられない。「練習公開しますかっ!くっそ自由な!本当に皆さんには取材とか関係なく、いつか、ただひたすら仕事も忘れて。飲みながらでも何でもいいんで!見てもらえる時間がいつか来たら良いなと思っています」。それはいつなのか…。首を長くして待ちたい。(大和弘明)
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