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Sunday, August 27, 2023

「いじめ」一蹴したサッカー少年、世界を渡る…亡き婚約者から ... - 読売新聞オンライン

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 黄色と黒のユニホームをまとった中学1年生たちが、照明下のグラウンドで必死にサッカーボールを追いかけている。7月18日夜、さいたま市内の中学校。ボールを蹴るバコッ、バシッという乾いた音が響く。およそ40人が額に汗を光らせ、シュートやパスの練習を繰り返していた。

 サッカー選手の育成からプロチームとの契約まで一括して手がける「セジニョサッカーアカデミー」。「はーい、次はドリブルの練習ね」。運営する斉藤誠司さん(37)が声を掛けると、「ハイッ!」と元気のいい声があがった。

 「ここからワールドカップ(W杯)に出場する選手を送り出すのが夢なんですよ」。中学生や高校生の頃、日本代表に選ばれたキャリアを持つだけに、その思いは真剣そのものだ。

 プロのサッカー選手を目指して、高校を中退し、単身ブラジルに渡った。ポルトガルやラトビア、インド、バーレーンなど計11か国・地域のプロリーグでプレー。戦力外の憂き目にも遭いながら、W杯への出場を夢見て、道を切り開いてきた。

 「色んな考えや文化を持った人たちと交流できるのが楽しくて」。子どもたちにサッカーを教える傍ら、自らも練習に励み、まだプレー経験のないアフリカのチームへの移籍を目指している。

 斉藤さんは、少年時代から幾多の逆境を乗り越えてきた。

 小6の時、ファンだったJリーグ・柏レイソルのジュニアユースの試験を受けたが、2回も落ちた。学校でいじめに遭って転校した経験があり、「日陰にいる自分を変えたい」。2回目の不合格を知るやいなや、チームの事務所にアポなしで突撃した。

 出てきたスタッフに「最後のチャンスをください」と直談判。「度胸あるじゃん。面白い。来週の練習においでよ」と誘ってもらった。すかさず持参したスパイクを見せ、「これから練習があることも知っています。今日、参加したいです!」とたたみかけると、「君みたいなのは初めてだよ」と、試験を兼ねた練習への参加が認められた。

 1か月後に合格。メキメキと実力をつけ、その後、中学世代の日本代表に選出された。そして、高校1年の時、大きなチャンスが訪れる。試合を見に来たスカウトから「海外に挑戦しないか」と誘われたのだ。しかも、サッカー王国・ブラジルの名門ユースチームだ。

 「移住するつもりで行く」。周囲の反対を振り切り、人生の大勝負に挑むことを決意した。

 16歳の時にブラジルへ渡った斉藤さん。異国の地で波乱万丈の生活が待っていた。名門のユースチームから昇格してプロ契約し、レンタル移籍したチームでプレーしたが、1年でクビになった。

 プレー映像をDVDにまとめて、ブラジル全土を回って売り込み、2011年までに4チームを渡り歩いた。試合に負けた時、サポーターから車に生卵を投げつけられ、勝った時は同じサポーターからサインをせがまれる。そんな荒波にもまれた。

 11年には欧州のチームに移籍。さらに、アジア、中東、中南米でプレーした。チームに溶け込もうと、「ありがとう」という現地の言葉を必ず覚え、チームメートに自分から歩み寄った。しのぎを削ったライバルから「お前がいたから成長できたんだ」と声をかけられた時は、「このチームに巡り合えてよかった」。

 異国の文化も積極的に受け入れた。イスラム教徒の多いバーレーンでは、お祈り用のじゅうたんを購入し、練習前後に他の選手と一緒に祈りをささげた。ラマダン(断食月)では、空腹に耐えながら一緒に練習を乗り切った。「こっそり軽食をカバンに忍ばせていたけど、見ないふりをしてくれていた。自分を受け入れてくれたのかな」

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