メディア空間考 高津祐典
第47期囲碁名人戦第5局の最終盤、井山裕太名人が勝利への道を突き進んでいたときのことだった。控室の林漢傑八段が突然「え、ちょっと待って」と声を上げた。前のめりになり「やな予感が……」と真剣な表情を浮かべる。「これはやばいです」
林八段は控室に設営されたブースで、ユーチューブ「囲碁将棋TV」にライブ出演していた。中継画面には、井山名人と挑戦者の芝野虎丸九段の対局姿も映し出されている。AIの評価値が井山名人の勝率9割超になった局面で、ひょっとしたら形勢がひっくり返るのかもしれない手が飛び出したのだ。
林八段の驚きの声に、チャット欄は「なんですか!?なんですか!?」「びっくりするね」「林先生の動きが激しすぎ(笑)」と盛り上がった。このとき、中継の同時視聴者は5千人。再生回数は10万回ほどになっていた。
結局、対局は井山名人がそのまま勝利したものの、対局を盛り上げた林八段に、視聴者から「お疲れさまでした」「ありがとうございました!」とねぎらいの声が並んだ。
囲碁や将棋、麻雀(マージャン)といったボードゲームは、私が子どもの頃よりも格段に身近な存在になった。昔はプロの競技に触れる機会はBSかCS放送が中心だった。いまはその道のプロたちが競技や解説の動画を上げ、ツイッターで情報発信するようになっている。
林八段も「つるりんチャンネル」というユーチューブチャンネルを持つ。テレビにも出演しているが、完成度が高い番組が作れる半面、どうしても自由度は低くなると感じていた。
「新しい普及の形かなと思っ…
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待っています
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