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Saturday, December 24, 2022

的川博士の銀河教室:的川博士の銀河教室 726 アルテミス計画 順調な ... - 毎日新聞

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宇宙船がたどったDRO軌道

 今回は、先日地球に帰還きかんした宇宙船「オリオン」の軌道きどうについてくわしく説明しましょう。

 新開発の大型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」初号機から分離ぶんりして月へ向かう軌道に乗ったオリオンは、図1のように、「クルーモジュール」と「サービスモジュール」が結合した構成になっています。クルーモジュールは、宇宙飛行士が乗るカプセルです。居住空間ですね。サービスモジュールは、かつて国際宇宙ステーション(ISS)への無人補給船として運用されていた欧州宇宙機関おうしゅううちゅうきかん(ESA)の補給機(ATV)の技術を基に開発されたものです。オリオンの推進力となるほか、姿勢制御しせいせいぎょ、クルーモジュールへの電力供給と温度管理、空気と水の供給も行います。

 さて、軌道については図2を見てください。SLSで打ち上げられたオリオン(図2の(1))は、SLSから分離した後、月へ向かう軌道に乗りました((2))。そのまま行けば1972年のアポロ計画の時よりも遠くへ届く軌道ですが、途中とちゅうでサービスモジュールのエンジンを噴射ふんしゃして減速し、月の重力にとらえられて月面からわずか130キロメートルまで接近しました。そして月の公転運動と重力を利用して軌道を大きく変更へんこう(スイングバイ)し((3))、タイミングを見計らって再びエンジンを噴射してDRO(遠方逆行軌道)にませました((4))。DROの上((4)から(6)までの範囲はんい)でいろいろなテストを行った((5))後に、またエンジンを噴射して、オリオンはDROから脱出だっしゅつ((6))して月に接近しました。スイングバイ((7))して新しい軌道に乗り、タイミングを見てエンジン噴射し、地球を目指す軌道にほうまれました((8))。その後は、細かく軌道修正きどうしゅうせいかえしながら、地球まで無事に帰って来た((9)、(10))というストーリーです。

 クルーモジュールが地球大気圏たいきけんに再びむと、大気との激烈げきれつたたかいが待っていましたが、カプセルをおおっている耐熱たいねつシールドは見事にそれにえ、完璧かんぺき再突入さいとつにゅうのフィナーレを演じてくれました。以上の複雑な軌道操作を、地上局があざやかなお手並みでやりげました。

 DROについて補足すると、この特殊とくしゅ月周回軌道つきしゅうかいきどうに乗っている探査機は、月の表面から遠い所にいるので「遠方」、ミッションを遂行すいこうしている時間帯(図2の(4)~(6))に月と反対方向に運動しているので「逆行」の名が付けられています。地球と月の力のう点(ラグランジュ点)が近くにある影響えいきょうで、軌道修正に必要な燃料が少なくて済むというメリットがあるのです。

 さあ、こうして順調にすべり出したアルテミス計画――。米航空宇宙局(NASA)のこれからの取り組みが、楽しみになりましたね。


的川泰宣まとがわやすのりさん

 長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍かつやくしてきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉めいよ教授。1942年生まれ。


日本宇宙少年団(YAC)

 年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac-j.or.jp


 「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣まとがわやすのりさんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載れんさい開始。カットのイラストは漫画家まんがか松本零士まつもとれいじさん。

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